菊蒔絵大棗
原羊遊齋作
江戸時代(1817年頃)
高 8.2糎 径 8.1糎
江戸後期を代表する茶人であった松平不昧公は、広範囲にわたる道具を蒐集し、多方面からの茶道具研究を行ったことでも知られるが、黒地の棗にも強い関心を示しました。蔵帳にも多くの黒棗が載っており、「上の部」に記載されています。この棗は、不昧公が江戸で活躍した蒔絵師の原羊遊齋に所蔵の余三作の「高台寺蒔絵棗」の意匠を用いた三十の棗を作成させ諸家に配った物として知られます。黒塗棗の蓋甲より身にかけて、八重菊・一重菊・裏菊と三種類の菊花を高蒔絵で表して重ね、花芯と萼には金の薄板を貼り付けた豪華な意匠であります。蓋裏には不昧公の花押が朱漆で記されています。